信じる派、信じない派も一読の価値あり
怪談の科学 幽霊はなぜ現れる
講談社
1988.7.20
この本のあらすじ
「幽霊なんて、いるわけがない」という人も、頭のすみではやはり何か引っかかるものを持っているはず。「幽霊はいる」と信じている人も、この科学の時代に、確信のゆらぐこともあるでしょう。幽霊は「いる」派も「いない」派も、ちょっと中村さんの話に耳を傾けて下さい。この本には中村さんが長年かけて収集した怪談の事例がいっぱい入っています。そしてその話の奥の方から、不思議で怪奇な人間の「心」が見えてきます。そうです、"幽霊は出る"のです……。
おすすめコメント
「普段とくに気に留めないが考えてみると不思議な事柄を、科学的なアプローチでその領域の専門家以外の読者にもわかりやすくかつ楽しく解説する」のがブルーバックスの魅力の一つだとすると、本書はきわめてブルーバックス的な傑作といえると思います。幽霊は幻覚であるとなんとなく思っている人も、なぜそういった幻覚を見るのかまではなかなか考えたことないと思います。本書では精神医学の専門家である著者が、そのあたりを中心に幽霊という存在を徹底的に分析!幽霊を信じる人も信じない人も、目から鱗の幽霊学です。
胸が熱くなる感動の評伝
サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」
講談社
2015.3.20
この本のあらすじ
20世紀科学の祭典にようこそ!過剰な刺激を欲し続ける現代人にとって20世紀科学の発明・発見の舞台裏こそリアリティを体感できる大人の遊園地だ。20世紀に突如として現れた発明品と発明者の伝記を読み解くことで、いままた現代科学が「素人にも理解できる」機械と人間からなる実体(リアル)へと変わる。
おすすめコメント
日本を代表する博物学の大家の荒俣宏。本書は彼の「ドラマのようにおもしろい科学史を語りたい」との思いから作られ、20世紀の著名な科学者たちの人間ドラマを通して、眼鏡や飛行機などの偉大な発明の誕生と発展の歴史を紐解いてゆきます。まさかあの偉大な発明にこんなドラマがあったとは!?忘れがちですが、近代科学はある日突然神様から与えられたわけでも、常人に理解不能な天才たちが超人的なひらめきで作り上げたものではなく、僕らと同じ人間が空想と現実の狭間で悪戦苦闘し、ついに勝ち取った栄光の歴史なのですね。久しぶりに胸が熱くなる評伝を読みました。
抜群におもしろい科学読み物
食欲の科学
講談社
2012.10.18
この本のあらすじ
ときに「魔物」となる食欲の謎に第一人者が迫る! 脳は体重を一定に保つべく、食欲を巧妙にコントロールしている。しかし、ヒトはときに自分の食欲を制御することができなくなってしまう。食欲を「魔物」に変えるのもまた、脳なのだ。脳内で食欲がつくり出されるしくみを脳生理学のトップランナーが解き明かし、「ヒトの食欲」のメカニズムに迫る。
おすすめコメント
「空腹感」と「満腹感」を使い分け、僕らの健康と体重を絶妙にコントロールしてくれる「食欲」。普段あまり気にすることはかもしれませんが、考えてみれば何とも不思議なメカニズムです。その「食欲」なるものを脳科学的に紐解き、この機能がいかに重要であるかを読者に教えてくれます。医学的に役に立つ部分もたくさんありますが、なにより人体の中で日々こんなことが起きていたのか!?という新鮮な驚きに満ちていて、一冊の読み物として抜群に面白いです!食欲に関する予備知識が一切なくてもこれだけ楽しませてくれるのは、さすがブルーバックスシリーズといったところでしょうか。
数学、まずは素数から
素数が奏でる物語
講談社
2015.3.20
この本のあらすじ
物語の主人公は、2種類の素数。「4で割って1余る素数」と、「4で割って3余る素数」。一方は「2つの整数の平方和」で表せるが、他方は表せない。一方はx^2+1の素因数に現れるが、他方は決して現れない。両者の無限性を証明したオイラーの巧みな方法とは? 2つの素数の個性がわかる、連分数や平方剰余の相互法則、ガウス素数とのふしぎな関係とは?
おすすめコメント
数学という学問の中で一見単純ながら実は奥深く、多くの学者を虜にしている神秘的で魅力的な存在「素数」。学生時代、数学に特別興味がなくとも、素数の神秘的な存在感にわくわくした人は多いはず!本書はその素数が持つ数学的な面白さと、深遠なる神秘を解き明かしてきた4人の数学者、ユークリッド、フェルマー、オイラー、ガウスの足跡をわかりやすく解説してくれます。数学の神秘的な側面にタッチしてみたい方におすすめです。素数の神秘的な世界をもっと深く知りたくなりますよ。
ホーキング入門に最適の一冊
ホーキング 虚時間の宇宙 : 宇宙の特異点をめぐって
講談社
2005.7.21
この本のあらすじ
「車イスのニュートン」が描く驚異の宇宙像。宇宙に始まりはあったのか? 宇宙に終わりはくるのか? 宇宙の特異点ブラックホールの本当の姿は? そして、すべての鍵をにぎる「虚時間」とは?
おすすめコメント
イギリスを代表する理論物理学者、スティーブンホーキング博士。彼と元妻の関係を描いた映画『博士と彼女のセオリー』は第87回アカデミー賞5部門にノミネートされ、彼の研究が再び注目を浴びています。本書は彼の主な研究であるブラックホールと特異点を中心に、ホーキングの著作からの引用、図解、数式を交えながらわかりやすく解説されています。細かな説明などは意図的に省略されていたりするので、ホーキングの理論のイメージをつかむには最適な一冊といえるでしょう。
「ヒッグス粒子」がわからなかった方へ
宇宙になぜ我々が存在するのか
講談社
2013.1.18
この本のあらすじ
宇宙の見方が変わる最新宇宙論。私たちは星のかけらからできています。では、その星たちは何からできているのでしょうか。宇宙のはじまりにどんどん近づきながら、ニュートリノの不思議な性質をさぐりながら、ヒッグス粒子やインフレーション、そして暗黒物質との関わりを解き明かし、宇宙はどうやってできたのか、どうして私たちがこの宇宙に生まれ、存在することができたのかを考えていきましょう。
おすすめコメント
2013年、物質に質量をもたらすといわれる「ヒッグス粒子」の存在を提唱した、ピーター・ヒッグス博士がノーベル物理学賞を受賞しました。このニュースで宇宙の仕組みを解明する鍵とされる「ヒッグス粒子」に興味を持った方も少なくないのではないでしょうか。しかしなんだか難しくてよくわからなかったという方は是非本書を一読することをお勧めします。一般の方にはなかなかイメージしづらい素粒子論を中心に、最新の宇宙理論をここまで簡潔にわかりやすく教えてくれる本はそうありません。宇宙に興味があるすべての方にオススメしたい一冊です。
科学の話はおもしろいですね。ブルーバックスシリーズを入り口に各分野をどんどん掘り下げていくのも良いのではないでしょうか。さて次週はマンガのなかで活躍する天才たちに注目した「この天才がすごい!」をお送りします。どうぞお楽しみに!