天才の光と影を軽やかに描く
シュガー(1)
ゴマブックス
2002.4.9
この本のあらすじ
人気者でヤンチャ者。北海道の小さな町で母と祖父母に育てられた石川凛、16歳。得意技はダンス。運動神経もかなりいい。周りからは何を考えているのかわからん、とよく言われる。凛は今、高校を中退し旅立ちの時を迎えつつある。話の流れでなんとなく「板前」になるために東京に出ることになったのだ。これといった明確な目的のないまま東京へと向かおうとする凛がふとしたきっかけで出会ったのがボクシング。やがて凛の中で何かが芽生え始めるーー・・・。
おすすめコメント
「天才」を描くのがうまいマンガ家の2大巨頭が、本作の新井英樹とのちに紹介する『シャカリキ』の曽田正人だと思っています。特に新井英樹の『シュガー』は「天才」をテーマにしたマンガのなかで個人的に最も好きな作品です。新井英樹の素晴らしさは『ザ・ワールド・イズ・マイン』のモンや『キーチ!!』のキーチのように異端の者が宿命的にそなえる他者と理解しあえない孤独さや悲哀を痛々しく描くところ。本作『シュガー』では主人公の石川凛が圧倒的なボクシングの才能を開花させていく様子や、華々しい実績のあるエリートボクサーをも軽々と蹂躙していく様も爽快感があって面白く、続編の『RIN』ではその圧倒的な才能とボクシングが彼を変えてしまい、次第に周囲から孤立し、唯一の求める人からも拒絶されてしまうという皮肉な展開に。終始強気でお調子者の凛が「変ったってわかってんなら 昔のよしみでさあ 見捨てねえで 止めてくれよ オレを!!」と心情を吐露するシーンが悲しすぎます。
天才を描かせたらピカイチのマンガ家
シャカリキ!(1)
小学館
2000.6.27
この本のあらすじ
自転車に取りつかれ、坂を登ることに全てを賭ける少年、野々村輝の熱血感動物語!! 曽田ワールドの原点となる傑作!
おすすめコメント
新井英樹が天才の悲哀を描くのに対して、曽田正人は天才の狂気を描きます。曽田正人が描く天才は元から突出した能力があるタイプではなく、ひとつのことに夢中になるとほかのことが目に入らず、一心不乱にやり続ける猪突猛進タイプが多いです。普通こういった努力を長く続けるには、辛いとか面倒くさいといった感情に打ち勝たなくてはいけませんが、作者はこういった誰もが持っている感情が欠落した人物こそが天才であると描きます。『capeta』の勝平太や『め組の大吾』の大吾も同様ですが、こういったタイプの天才は一般の人が怯むような場面でも、恐怖がマヒしているかのように突っ走ってしまい、いつか大事故につながるのではないかと周囲をひやひやさせます。一貫してこういったテーマを描いている曽田正人の原点がこのシャカリキなので、未読の方は是非お手に取ってみてください。
国民的サッカーマンガは天才の宝庫
キャプテン翼 1
集英社
1997.8.12
この本のあらすじ
サッカーボールを友達に育った少年、大空翼は小学6年生。南葛小に転校してきた翼は、修哲小の天才GK・若林源三と出会う。翼は若林に勝負を挑むが、決着は両校の対抗戦でつける事に!!
おすすめコメント
日本のみならず世界中のサッカー小僧を夢中にさせてきたサッカーマンガ『キャプテン翼』。サッカーの申し子である主人公の翼をはじめ、天才ゴールキーパーの若林源三、アルゼンチンのファン・ディアス、ブラジルのナトゥレーザなど、たくさんの天才的キャラクターが登場する本作。主要なキャラクターはそれぞれの必殺技をもっており、そのどれもが思わず真似したくなってしまうカッコよさ!初期のキャプテン翼ファンの僕としては、心臓の持病のため数分程度しか試合に出ることができず「ガラスのエース」と呼ばれた天才マルチプレイヤーの三杉淳がお気に入りです。
天才同士の頭脳戦が見どころ
DEATH NOTE モノクロ版 1
集英社
2004.4.2
この本のあらすじ
このノートに名前を書かれた人間は死ぬ…。死神 リュークが人間界に落とした一冊のノート「DEATH NOTE」。ここから、二人の選ばれし者「夜神月」と「L」の壮絶な戦いが始まる!! かつてないスリルとサスペンス!!
おすすめコメント
日本ですでに実写映画化、アニメ化されており、今後ドラマ化、ハリウッドでの実写映画化も控えている説明不要に人気作です。見どころは何と言っても二人の天才「夜神月」と「L」が繰り広げるスリリングでサスペンスフルな頭脳戦!深いメッセージの込められた本作ではありますが、尋常じゃなく頭のよいこの二人の攻防を見ているだけでも十分に楽しめる傑作です。
僕は『シュガー』で新井英樹作品が好きになったのでとても思い出深い作品です。かなり癖の強い作家ですが『シュガー』は比較的読みやすいほうかと思います。さて次週は植物の面白さを教えてくれる本をご紹介する「こんなに楽しい植物の世界」をお送りします。どうぞお楽しみに!