読んでほしいこの本

2015/5/27 written by BOOK TRUCK

3巻以内で完結する傑作マンガ

今回は1時間から2時間くらいで読み終えることができる「3巻以内で完結する傑作マンガ」を6冊ご紹介します。あの名作アニメの秀逸なコミカライズ作品や、歴史的な傑作マンガ、隠れた名作SFなどなど、3巻以内ながら驚異的な読み応えの作品ばかりです。どうぞお気に入りを見つけてみてください!

恋愛マンガとしても傑作

子供はわかってあげない

田島列島

講談社

2014.9.22

この本のあらすじ

水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)。モーニング誌上で思わぬ超大好評を博した甘酸っぱすぎる新感覚ボーイミーツガール。センシティブでモラトリアム、マイペースな超新星・田島列島の初単行本。出会ったばかりの二人はお互いのことをまだ何も知らない。ああ、夏休み。

おすすめコメント

アニメや超能力、探偵や新興宗教といった硬軟のテーマを織り交ぜ、終始オフビートな青春マンガのスタイルをとった本作ですが、僕はこのマンガの恋愛の部分にすごく魅力を感じました。主要キャラクターである二人が徐々に惹かれあっていく様子が高校生らしくて身もだえするほどに初々しい!そして、この二人の天然ともとれる純粋さが、恋愛になると一種の大胆さを生み出していて、これまた大人には真似のできない清々しい爽やかさがあります。

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ありそうでなかった死後の世界の描き方

まじめな時間

清家雪子

講談社

2012.5.23

この本のあらすじ

植村一紗(うえむら・かずさ)、高校生。趣味は遊ぶこと、歌うこと、寝ること。高校生活を満喫して、近々好きな男の子に告白してつきあうことになるかも。そんな日々をこれからも生きていくはずだった。・・・・・・そんな一紗を襲う運命とは!? 『秒速5センチメートル』の緻密で繊細なコミカライズで読者を魅了した清家雪子の初オリジナル作品、堂々のスタートです!

おすすめコメント

順風満帆の高校生活の真っ最中に突然命を絶たれることになった主人公の女子高生が、幽霊になって現世をさまようといったストーリーです。わりとありがちな設定かなと思いきや、本書内での描かれる死生観や死後の世界が、僕ら日本人がなんとなく抱いている「死」のイメージを的確に捉えていて、作品の世界観にスッと馴染むことができます。本書は幽霊の主人公を通して、人は身近なものの死とどのように向き合い乗り越えていくのかといった重ためのテーマに切り込んでいくのですが、随所に嫌味なく挟まれるコメディ展開が、物語全体がシリアスになりすぎるのをうまく抑制していてとてもバランスのとれた良作といった作品です。

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文学としてエンタメとしても超一流

銭ゲバ

ジョージ秋山

幻冬舎

2007.10.04

この本のあらすじ

貧乏だった蒲郡風太郎はいつも馬鹿にされ、病弱だった母親は医者に見捨てられ死んでしまう。少年時代に金の絶対的な力を見せつけられた風太郎は、金のためなら手段を選ばない大人になっていく。そんな彼を人々は「銭ゲバ」と呼んで軽蔑したが、風太郎の金儲け道は止まることを知らなかった・・・・・・。

おすすめコメント

1970年代に少年サンデーで連載されていた本作。金に異常に執着する主人公の狂気と悲哀を描いた歴史的名作です。芥川龍之介の『羅生門』のように、極限状態で露わになる人間の性に深く切り込んだ文学性の高さにただただ圧倒されるばかりです。それでいてエンターテインメントとしてしっかり盛り上げ、きっちりオチをつけるのだから、見事というほかありません。マンガ好き、文学好き、どちらも大満足の傑作マンガです。

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隠れた傑作SFマンガ

国民クイズ

杉元伶一、加藤伸吉

太田出版

2001.7.19

この本のあらすじ

日本国憲法第12章 国民クイズ(国民クイズの地位) 第104条 国民クイズは国権の最高機関であり、その決定は国権の最高意思、最高法規として、行政、立法、司法、その他あらゆるものに絶対、無制限に優先する。本憲法もその例外ではない――。クイズに勝ち抜けばどんな願いもかなう! 戦慄の国家意思決定システムが始まった!!

おすすめコメント

「クイズに勝ち抜けば、国家権力のバックアップのもとあらゆる願いがかなえられる!」と聞くと、かなりのトンデモ設定に聞こえますが、本書は世界一の大国(軍事国家)となった近未来の日本を舞台に、資本主義や民主主義の制度的欠陥や人の欲望といったものを真正面から描こうとした極めて骨太の傑作SFです。1994年に単行本が出版された本書ですが、2015年の今読むとこのディストピアとして描かれる日本の姿に、近年の暴走気味の日本国家の姿を重ねてしまい、かすかなリアリティを感じてしまうところが何より恐ろしいです。初期の松本大洋のような勢いのある絵柄がこの世界観によく合っています。

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本格派クラシックマンガの名作

マエストロ

さそうあきら

双葉社

2004.7.17

この本のあらすじ

不況で、日本屈指の交響楽団が解散!食えなくなった連中が、謎のジジイ・天道徹三郎のもとに結集!これは、身も心も音楽に捧げた者たちが、極上の「運命」と「未完成」を奏でる物語である。手塚治虫文化賞に輝いた傑作『神童』全4巻につづく、感動の音楽漫画です!

おすすめコメント

手塚治虫文化賞に輝いた『神童』も見事な音楽マンガでしたが、いやはやこちらもそれと比べても全く遜色ない名作です。さそうあきらの音楽(とくにクラシック)に対する愛と造詣の深さに裏打ちされた本作は、陳腐な表現になってしまいますが、紙面から本当に音楽が聴こえてくるかのような圧倒的な説得力と臨場感があります。また物語の中心にいるのは謎のおじいちゃん指揮者なので、クラシック音楽における「指揮者」の重要性や演奏に与える影響についてなんとなくのイメージしかもっていない僕のようなクラシック素人にとっては、クラシック音楽の入門書としても最適な一冊ではないでしょうか。

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あの感動作はマンガもすごい!

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

超平和バスターズ、 泉光

集英社

2012.9.4

この本のあらすじ

あの日、ここで止まった時間が、動きだす。 小学生の時に友達と“超平和バスターズ”というグループを作り、“じんたん”と呼ばれていた少年・宿海仁太。 “めんま”の死をきっかけにグループはバラバラになってしまっていたが、彼の前に突然めんまが現われて――!?

おすすめコメント

アニメや映画が号泣必至と大絶賛された通称「あの花」。近年ここまでストレートに感動できる作品は結構貴重かもしれません。その名作アニメを丁寧に繊細にコミカライズしたのが本作です。あの胸を締め付けられるような深い感動はそのままに、コミックならではの独自のアレンジが加えられていて「あの花」ファンは必読の一冊となっています。このファンタジーな設定と幼馴染たちの切ない恋愛模様が、筒井康隆の名作を細田守が映画化したアニメ版『時をかける少女』を彷彿とさせ、アニメ未見の読者も十分に楽しめる作品です。

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いかがでしたか。様々なタイプの名作ぞろいで、日本のマンガ文化の豊かさを再認識させられました。さて次週はもう少し腰を据えて読む「5巻以内で完結する傑作マンガ」をお送りします。どうぞお楽しみに!

BOOK TRUCK

2012年3月オープン。BOOK TRUCKは公園や駅前、野外イベントなどの行く先々に合わせて、その都度品揃えや形態が変わるフレキシブルな移動式本屋として、新刊書、古書、洋書、リトルプレス、雑貨などを販売。

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