作品の隠されたテーマはコレだ!?
──いわゆるアニメっぽくならないようにこだわったということですね。監督の中で今回、特にアニメ化したいと思われた原作のシーンなどはありますか?
神戸シーンではなく、絵にできない部分なんですが、考え方っていうんですかね。加瀬さんにも最初に言いましたよね。
加瀬はい。
神戸「感情にとらわれないで考える」「思い込みとか固定観念にしばられちゃいけない」ってことを言ってると思うんですね、この小説って。萌絵は思い込みがあったけど、犀川はニュートラルだから、先に答えにたどりつく。そういうことが伝わればいいなと思ってます。セリフにして言うのは簡単なんですけど、そうしないでやるのは難しいので。
──加瀬さんは監督と、そういった隠れたテーマについても話し合われたんですね。
加瀬おおよその話をいろいろとして、最終的に監督が言ったのは「ミステリィではない」。
──そうなんですか!?
加瀬「えっ!?」って思ったんですけど(笑)。それを聞いて、これは事件を解決していく話ではないと僕はとらえたんです。犀川にとっての問題は「なんで犯人は人を殺したんだろう」ってことじゃないと思うんですよ。「犯人の思考はどうなってたんだろう」ということに興味を持ってるのかなと思って。
──監督の中では本作に関して謎解きを面白く見せるというような意識はあまりないんですか?
神戸ええ。(『すべてがFになる』は)ミステリィの形をしてるけど、ミステリィではない。ミステリィは大好きなんですけど。犀川は、どのようにして密室殺人が行われたかにしか興味がないんですね。「なぜ?」っていうのには関心を示してないし、触れないんですね、最後まで。
──「どういういきさつで、犯人が被害者を殺したのか」っていう、動機とかの、人間ドラマ的な部分に犀川は興味がないということでしょうか。
神戸だから密室殺人の謎は解いたかもしれないけど、事件は解決はしてないんです。だから、ミステリィであって、ミステリィじゃないんじゃないかと。
──なるほど。そういう意味でも本作は変わってますね。
加瀬アニメーションでここまで量の多い会話劇ってのも、最近はそうないんじゃないですか。飛んだり跳ねたりもしないし、ひたすら座ってタバコ吸って(笑)。今回はとにかく、その会話をいかに心地よく聞けるものにするか、僕たちもがんばってます。
神戸今までにあまりこういったタイプのものはなかったんじゃないでしょうか。不思議なミステリィなんだろうなって思います。
取材・文 / 武富元太郎