読んでほしいこの本byコレミス

2015/11/10 written by Collemys

東京創元社・編集部がおススメする珠玉のミステリ

日本で初めてミステリ専門文庫を創刊した、ミステリの老舗・東京創元社。さまざまなミステリを刊行し、多くの読者を魅了してきた同社の編集部が、「読んでほしい」ミステリをご紹介します。
そろそろ寒さも本格的になる季節。家の中で退屈しないよう、温かい飲み物を片手に珠玉のミステリに酔いしれてみては。

とびきり奇妙な『謎』の世界へ、ようこそ。

夜の床屋

沢村浩輔

東京創元社

本作は、大学生の佐倉が遭遇した奇妙な事件を収録した、全7編の連作短編集です。
山奥の無人駅前にて、深夜営業する床屋の秘密(表題作)。佐倉の旧友の身に起きた、熟睡中にベッドの下の絨毯だけが盗まれた事件(「空飛ぶ絨毯」)。廃工場に棲むという“ドッペルゲンガー”探索(「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」)。不可解な遺言がまつわる洋館での宝探し(「葡萄荘のミラージュⅠ」)。
……と、ここまでは不思議な謎と意外な真相を楽しむ、軽やかなミステリとして読めます。ところが、後半の「葡萄荘のミラージュⅡ」「『眠り姫』を売る男」「エピローグ」を続けて読むと、事態はとんでもない方向へと発展していきます。
物語の結末で、佐倉の前に現われた驚くべきものとは? 今までに体験したことのない読後感を、味わえること間違いなしです!

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仲の良い家族の、衝撃的な「裏の顔」とは?

ひまつぶしの殺人

赤川次郎

KADOKAWA / 角川書店

数ある赤川作品のシリーズの中で、とてつもなく奇抜な設定といえばこれでしょう。一見、仲が良く平凡なご家庭の早川家。しかし実は、母親は泥棒、長男は殺し屋、次男は弁護士、長女は詐欺師、三男は警察官という、個性的(?)な一家なのです!
主な視点人物は、唯一家族の裏の顔を知り、「もしも」のために弁護士になった次男・圭介。家族の正体がバレないよう奔走する、彼の苦労人っぷりは同情しつつも笑ってしまいます。
シリーズ第1作の本書では、謎の石油王が滞在するVIPホテルを舞台に、それぞれの「仕事」のために集まった早川家の面々が、殺人事件に巻き込まれてしまいます。犯人の目的とは? 圭介は家族の秘密を守り抜くことができるのか? 
ユーモアとスリルと家族愛に満ちた、絶品のミステリをどうぞお楽しみください。

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翻訳ミステリ、まずはこの作品を。

ポケットにライ麦を

アガサ・クリスティ、宇野利泰

早川書房

ミステリは好きだけど、翻訳ミステリはあまり読んだことがない……という方におすすめしたいのは、やっぱりアガサ・クリスティ。言わずと知れた、世界中で読まれているミステリ界の大・大・大巨匠です。『ポケットにライ麦を』は著者が生んだ名探偵のひとり、ミス・マープルが活躍する傑作。『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』といった名作は数あれど、ひけをとらない面白さです!

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読みやすさに自信アリ!

養鶏場の殺人/火口箱

ミネット・ウォルターズ、成川裕子

東京創元社

同じイギリスの女流作家で現代を代表するのがミネット・ウォルターズ。『養鶏場の殺人/火口箱』は、『遮断地区』で『ミステリが読みたい!2014年版』海外編の1位に輝いた著者の中編2作を収録しています。もともと「読書好きの人々にふだんは読まない分野の本をためしに読んでもらおう」という試みで書かれた作品なのでとても読みやすく、実力派作家の魅力を気軽に味わえる作品です。この2作をきっかけに、豊饒な翻訳ミステリの世界へ踏み込んでみませんか?

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架空の街を舞台にリンクする11のミステリ!

晴れた日は謎を追って がまくら市事件

伊坂幸太郎、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一、道尾秀介、秋月涼介、北山猛邦、越谷オサム、桜坂洋、村崎友、米澤穂信

東京創元社

ここ蝦蟇倉(がまくら)市は、一見するとどこにでもありそうな、のどかな街です。しかし、この街で起こる事件というと、なぜか不可能犯罪ばかり。警察署の捜査一課には、不可能犯罪を専門に扱う係まであります。
同じ街を舞台に、本書は5人の作家が多彩な趣向を凝らしたミステリを執筆しています。また、姉妹編『街角で謎が待っている』には、本書とは違う6人の作家による短編が収められています。そして、この二冊の共通の舞台となる街は、11人の作家全員が設定からアイディアを出し合ってつくりあげているのです。そのため、各編で同じキャラクター、同じ場所が登場するなど、遊び心あるアンソロジーになっています。それぞれの作品のリンクを探すのも、本書の楽しみのひとつでしょう。
第一線で活躍する作家たちによる、架空の街の道案内。どちらからでもお読みいただけますので、気になった作家、タイトルがある本から気軽に手に取ってみてください。

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稀代の作家が幻想の糸で紡ぎあげた謎物語

聖女の島

皆川博子

講談社

綾辻行人、恩田陸、桜庭一樹――数々の書き手を魅了してやまない作家・皆川博子。彼女が書きあげてきた幻想ミステリのなかでも珠玉の一作が『聖女の島』です。
絶海に浮かぶ孤島。廃墟が埋め尽くす島の片隅にひっそりと建つ、修道会の更生施設。この隔絶された空間に、三十一人の少女と数人の大人が暮らします。廃墟のなかで戯れる少女たちをはじめとして、どこかこの世ならざるイメージのひとつひとつによって謎が紡ぎあげられていきます。そして最後、謎がそっと解けて世界が崩れていく感覚、ぜひ味わってみてください。
電子書籍の素晴らしさは、紙の書籍では入手困難にある本書のような作品も新品で、しかも気軽に買って読めることです。
本書を読んで皆川博子さんの小説世界に酔い痴れた方には、紙の書籍ですが『鳥少年』『結ぶ』(ともに創元推理文庫)もお薦めします。短篇も一級品ばかり。

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いかがでしたでしょうか。先が気になって、ページをめくる手がとまらない作品ばかりですね。作品中の名探偵と同じく、あなたも犯人やトリックを見破ることができたでしょうか…?

Collemys

「Collemys(コレミス)」は、名作ミステリーを数多く輩出してきた出版社である講談社・光文社・東京創元社・早川書房(50音順)とブックリスタが共に進める協同企画です。国内海外も新旧も問わず、各社のミステリー担当者が衝撃を受けた珠玉のミステリー小説や、その後のミステリーの形を決めた記念碑的作品など、様々な作品をミステリー愛読者の皆さんへご紹介してまいります。「Collemys」では、一見ミステリーとは思えないような意外な作品も「これも実はミステリー」と担当者ならではの目線からピックアップ。読者の方々のミステリーコレクションが充実するような企画をお届けします。

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