文句なしの名作
四月は君の嘘 1巻
講談社
2011.9.16
この本のあらすじ
桜の花びら、音楽、そして嘘。君と出逢った日から世界は変わる――母の死をきっかけにピアノを弾かなくなった、元・天才少年ピアニスト有馬公生(ありま・こうせい)。目標もなく過ごす彼の日常は、モノトーンのように色が無い……だが、友人の付き添いで行ったデートが、少年の暗い運命を変える。性格最低、暴力上等、そして才能豊かなヴァイオリニスト……少女・宮園(みやぞの)かをりと出逢った日から、有馬公生の日常は色付き始める!! 胸を打つ青春ラブストーリー!!
おすすめコメント
2016年9月に広瀬すず&山崎賢人主演で映画公開も決まっている話題作ですね。マンガは11巻完結と適度なボリュームで、最初から最後まで一つの物語として非常によくまとまっています。音楽を楽しむ心を忘れ、ついにはピアノが弾けなくなってしまった、元・天才少年ピアニスト。そんな彼を救ったものは、かつて彼の音楽に人生を変えるほどの衝撃を受けた人たちと、彼を取り巻く素晴らしい音楽たちであるという展開に胸が熱くなります。『3月のライオン』や『ボールルームへようこそ』などのように、万人にオススメできる非常に上質なマンガなので、未読の方は是非読んでみてください!
音楽と夕暮れと才能をめぐる五つの物語
夜想曲集
早川書房
2011.2.15
この本のあらすじ
ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。
おすすめコメント
『日の名残り』で英国文学の最高峰「ブッカー賞」に輝いたカズオ・イシグロが、2009年に発表した著者としては初の短編集。「音楽」に取り憑かれた人々が織り成す少し奇妙な5つのエピソードを、著者一流のユーモアと美意識を持って静かに優しく描きます。チェーホフに憧れる著者らしく、展開に派手さはないですが、心にしっとりと沁み入る味わい深いお話ばかり。お気に入りの音楽を小さくかけながら、夕暮れのベランダでゆっくりと読み進めたい作品です。
国民的作家の音楽考
意味がなければスイングはない
文藝春秋
2008.12.10
この本のあらすじ
音楽は書物と同じくらい人生にとって重要なものという村上春樹が、シューベルトからスタン・ゲッツ、ブルース・スプリングスティーン、Jポップのスガシカオまで、すべての音楽シーンから選りすぐった十一人の名曲を、磨き抜かれた文章とあふれるばかりの愛情を持って語りつくした、初の本格的音楽エッセイ。
おすすめコメント
村上春樹の作品を一つでも読んだことがある方であれば、彼がいかに音楽を愛しているかすぐにわかると思います。単に特定の曲やミュージシャンの話題が多く登場するというだけでなく、彼の描く小説のいたるところから音楽の香りが濃厚に漂っているのです。そんな村上春樹がジャズはもちろん、クラッシック、J-popまで愛情を込めて語り尽くしたのが本作。ノーベル賞絡みで小説ばかりがやたらと注目される著者ですが、本作のような、小説以外の村上春樹作品を読んでみると、彼の作家としての偉大さが非常によくわかります。とにかく文章が異常に巧い!平易な文体で内容が伝わりやすく、かつ読んでいて気持ちが良いのです。書かれている内容もさることながら、彼の文章そのものが凄まじい引力を持っていることに気付かされます。村上春樹の小説の世界観が少し苦手という方には、ぜひオススメしたい作品です。
音楽と脳の奇妙な関係
音楽嗜好症(ミュージコフィリア)
早川書房
2010.7.25
この本のあらすじ
雷に打たれ蘇生したとたん音楽を渇望するようになった医師、ナポリ民謡を聴くと発作を起こす女性、フランク・シナトラの歌声が頭から離れず悩む男性、数秒しか記憶がもたなくてもバッハを演奏できる音楽家・・・・・・。音楽と精神や行動が摩訶不思議に関係する人々を、脳神経科医が豊富な臨床経験をもとに温かくユーモラスに描く。医学知識満載のエッセイは、あなたの音楽観や日常生活さえも一変させてしまうかも?
おすすめコメント
昨年8月に惜しまれつつもこの世を去ったイギリスの神経学者オリバー・サックス。彼は脳神経科医としての体験をもとに多くのエッセイを執筆し、ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズ主演で映画化された『レナードの朝』など、数々のベストセラーを生み出した作家としても非常に有名です。本書では、共感覚や絶対音感といった有名なものから、「記憶喪失と音楽」「失語症と音楽」といったユニークなものまで、実際にあった奇妙な症例を挙げながら脳と音楽の関係に迫ります。なぜこんなことが起こるのか本当に不思議でしょうがありません。音楽にはまだまだ知られざるチカラが秘められているようです。
音を出す喜びに溢れる傑作
音楽と漫画
太田出版
2009.5.14
この本のあらすじ
若者の圧倒的支持を集めるDIY漫画家 ,大橋裕之が描くロック奇譚、ついに単行本化!! 「そこらへんのロックフェスなんかより、よっぽどロック!高度に計算されているはずなのに、敷居だけはとことん低い感じが大好きです」BOSE(スチャダラパー)
おすすめコメント
独特のゆるい絵柄と、シュールとナンセンスの半分ずつ混ぜたようなオフビートな笑いが癖になるマンガ家、大橋裕之の初の単行本です。主人公の不良が「暇だから」というなんともアホっぽい理由でバンドを始めるのですが、初めて楽器をアンプに繋いで力任せに弾いた「ボォォォォォーン」という内臓を震わす音に魅了され、一気に音楽の虜に!熱血とは程遠いあくまでもオフビートな展開なのですが、人々を突き動かす音楽の原初的なチカラと楽しさを思い出させてくれる一冊です。個人的には、主人公の音楽を聴く観客たちの声が「かっこいいなあ」「こんなの俺でもできるよ」「マイルスが乗り移っておる」「きもちわるいー」と様々なところに非常に好感が持てます。
音楽をもっと好きになる
学校で教えてくれない音楽
岩波書店
2014.12.19
この本のあらすじ
学校の音楽の時間が大嫌いだったあなた。合唱のとき、笑顔で裏声を出すのが苦痛だったきみ。「音楽の根っこにある一番大事なものしかない」瞬間を知ったなら、「音楽って、それだけじゃない」とわかる。孤高の即興演奏、テレビドラマ、CMから爆音まで,百戦錬磨の音楽家が「音楽の原石」の面白さ、そのつかみとり方を語る。
おすすめコメント
NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を担当し、日本レコード大賞作曲賞をはじめとするいくつかの賞を受賞した作曲家として再び脚光を浴びている大友良英。本書は日本を代表する音楽家の彼が日本の音楽のあり方を見つめ直した一冊。考えてみれば当然なのですが、「学校で教えてくれる音楽」は音楽の中のごくごく一部。その一面的な価値観をもとに点数をつけられた経験から、音楽全般に苦手意識を持ってしまっているのだとしたら、それはとても勿体無いことだと教えてくれます。音楽はもっと自由でシンプルな楽しさに満ちているもの。音楽の知識もほぼ不要ですし、非常に読みやすい良書です。
いかがでしたか。音楽をテーマに扱った小説やマンガがドラマや映画になる時、作品内の音楽をどれだけ説得力を持って映像化できるかが鍵になってきます。そういった意味でも9月に公開される『四月は君の嘘』には注目したいですね。さて次週は「大人のためのファンタジー」をお送りします。どうぞお楽しみに!