読んでほしいこの本

2016/1/20 written by BOOK TRUCK

大人のためのファンタジー小説

現実とは違う世界を描くファンタジー小説は子供のためのものと思われがちですが、現実を深く知った大人だからこそ作品のメッセージがより鋭く心に刺さるということもままあります。そこで今週は大人にこそ読んでほしいファンタジー小説を4冊紹介いたします。超弩級の名作ばかりですのでこの機会にぜひ!

あの有名ファンタジーの続編

だれもが知ってる小さな国

有川浩、村上勉

講談社

2015.10.28

この本のあらすじ

ヒコは「はち屋」の子供。みつ蜂を養ってはちみつをとり、そのはちみつを売って暮らしている。お父さん、お母さん、そしてみつばちたちと一緒に、全国を転々とする小学生だ。あるとき採蜜を終えたヒコは、巣箱の置いてある草地から、車ととめた道へと向かっていた。「トマレ!」鋭い声がヒコの耳を打ち、反射的に足をとめたヒコの前に、大きなマムシが現れた――

おすすめコメント

コロボックルと呼ばれる小人との交流を描いた日本のファンタジー小説の傑作『コロボックル物語 だれも知らない小さな国』。1959年に出版され、半世紀以上にわたって多くの読者に愛されてきたこの作品の続編が、なんと現代SFの名手・有川浩の手で綴られるとは!しかも『だれも知らない小さな国』と同じく、村上勉の挿絵がふんだんに入った豪華な作りが嬉しすぎます!!内容は、元祖コロボックル物語が持っている純粋無垢な世界観はそのままに、有川浩の抜群にうまいストーリーテリングによって、全く新しいコロボックル物語となっています。懐かしくも新しいファンタジー小説の名作をこの機会にぜひ!

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エンデの『モモ』と肩を並べる傑作

二分間の冒険

岡田淳、太田大八

偕成社

1985.4.1

この本のあらすじ

子どもしかいないふしぎな世界で〈一番たしかなもの〉をさがす悟は、竜退治に出かけることになった。2分間におこる冒険の物語。
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

おすすめコメント

ファンタジー小説というよりも児童文学といったほうがしっくりくるかもしれません。しかしこれが大人が読んでもびっくりするくらい楽しめるのです。実は僕も大人になってから初めて読んだのですが、あまりの面白さに食い入るように夢中で読んでしまいました。読後にはミヒャエル・エンデの傑作『モモ』を初めて読んだときのように深く感動したことをよく覚えています。両作品とも「時間」が物語のキーとなっていて、人生において真に大切にすべきものが何なのかに気づかせてくれるという点もよく似ていると感じました。日本にも『モモ』と肩を並べる名作があることがとても誇らしく、もっと多くの人たち(子供も大人も!)に読まれることを望まずにはいられません。

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底知れない才能を秘めたSF界の超新星

紙の動物園

ケン リュウ、古沢 嘉通

早川書房

2015.4.25

この本のあらすじ

ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた・・・・・・。数々の賞を総なめにした表題作のほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師の「ぼく」との触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる短篇集。

おすすめコメント

中国生まれアメリカ育ちの著者ケン・リュウは、ハーバード大学在学中に、法律、英文学、コンピュータ・サイエンスを学び、卒業後はマイクロソフト社に在籍したという異色の経歴の持ち主。表題作「紙の動物園」は史上初めてヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の3冠に輝いた作品ということで大きな話題になりました。科学的な知識・発想をいかしたSF色の強いもの、東洋思想がベースとなった幻想的なものなど、バラエティに富んだ作品が15篇収録されていますが、どれも読者の胸を鷲掴みにするほどに情感豊かでありながら、常に批評的でクールな視点を欠いていないところが、非常に現代的で洗練されていると思いました。まさしく現代SF・ファンタジーの最高峰といった作品です。

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子供と一緒に読むのもオススメ

不思議な尻尾

マーガレット・マーヒー、山田順子

東京創元社

2014.12.12

この本のあらすじ

トムはプロディジィ・ストリートの端の家に移ってきたばかり。さっそく付近を探検しに出たところ、通りの反対側の端にある大きな屋敷に引っ越しのバンが入っていった。越してきたのはトムと同じ名をもつ変わった男。だが彼と一緒に来たネイキーは、とてつもなく素晴らしい犬だった。ネイキーが尻尾を(上下に)振ると、なんと願いごとがかなってしまうのだ。

おすすめコメント

2015年に日本を代表するファンタジー作家・上橋菜穂子さんが受賞したことでも話題となった『国際アンデルセン賞』。著者のマーガレット・マーヒーは同賞を2006年に受賞しており、本作は彼女の遺作となった作品です。主人公の少年・トムが魔法を使える犬・ネイキーとの関わりを通じて、なにげない日常の素晴らしさやかけがえのなさを学んでいくというストーリー。メッセージがシンプルなことに加え、犬や猫も挿絵付きでたくさん登場しますし、全体のトーンが痛快でユーモラスで可愛い作品なので、子供と一緒に読んだりしても楽しいかもしれませんね。

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いかがでしたか。僕のイチオシは『二分間の冒険』『紙の動物園』です。普段ファンタジーやSFを読まない方にも是非読んでいただきたい作品ですね。さて次週は「面白くて役に立つ![エイ出版の実用ムック]シリーズ」をお送りします。どうぞお楽しみに!

BOOK TRUCK

2012年3月オープン。BOOK TRUCKは公園や駅前、野外イベントなどの行く先々に合わせて、その都度品揃えや形態が変わるフレキシブルな移動式本屋として、新刊書、古書、洋書、リトルプレス、雑貨などを販売。

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