これぞ名著!
ソロモンの指環 動物行動学入門
早川書房
1998.3.25
この本のあらすじ
孵卵器のなかでハイイロガンのヒナが卵から孵った。小さな綿毛のかたまりのような彼女は大きな黒い目で、見守る私を見つめ返した。私がちょっと動いてしゃべったとたん、ガンのヒナは私にあいさつした。こうして彼女の最初のあいさつを「解発」してしまったばかりに、私はこのヒナに母親として認知され、彼女を育てあげるという、途方もない義務を背負わされたのだが、それはなんと素晴らしく、愉しい義務だったことか……「刷り込み」理論を提唱し、動物行動学をうちたてた功績でノーベル賞を受賞したローレンツ博士が、溢れんばかりの歓びと共感をもって、研究・観察の対象にして愛すべき友である動物たちの生態を描く。
おすすめコメント
動物行動学における名著中の名著で、動物に興味のある方は何を差し置いてもまず最初に読むべき一冊ではないでしょうか。ローレンツと一緒に暮らす動物たちとのユーモラスなエピソードがたくさん収録されているのですが、そのどれもが最高に面白く、動物と触れ合うことの純粋な喜び、ローレンツの溢れんばかりの動物への敬意と愛情に胸を打たれます。猛烈に動物と仲良くなりたくなる一冊です。
動物行動学の入門書
動物の言い分 人間の言い分
KADOKAWA / 角川書店
2001.5.9
この本のあらすじ
人間と同じように動物たちにも理由がある。ヘビの長いからだ、ハリネズミの固いトゲ・・・・・・。人間から見ると妙だが、動物の視点から考えてみると、理にかなった理由がある。さあ、動物たちの生き方を覗いてみよう。
おすすめコメント
著者の日高敏隆は言わずと知れた日本の動物行動学の権威。彼はこの分野を開拓した偉大な研究者であるとともに、語り口の軽妙さや視点のユニークさから、名エッセイストとしても知られています。本書は動物行動学者として長年培ってきた知識や雑学を生かし、動物の生態や行動を動物たちの立場から紐解いてみせた一冊です。小難しい内容は皆無なので、小学校高学年くらいからのお子さんにもオススメですよ!
「動物と仲良くしている人」といえば……
わが王国の住人たち
光文社
1985.6.20
この本のあらすじ
ムツゴロウの動物王国には、実に個性豊かな若者たちが集まる。自称動物博士、家出娘、そしてときには外人もいる。そんな人たちが、動物との交流を深めるなかで展開する、おかしくて、心温まるドラマの数々・・・・・・。優しく、またチョット厄介な、愛すべき王国の人間と動物たちの生態(?)を、ムツゴロウが活写する生きた人間博物誌!
おすすめコメント
「動物と仲良くしている人」といえば、ムツゴロウさんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。様々な動物たちと泥んこになって戯れるビジュアルと、狂気のようにも見える危険な行動の強烈さにばかり目がいってしまいがちですが、それらもひとえに動物たちへの深い愛情と飽くなき探究心によるもの。そんなムツゴロウさんを慕ってか、ムツゴロウ王国にはたくさんの変わった動物好きが集まってくるそうです。彼らと動物との交流にこそ「動物と仲良くする」ためのヒントが隠されているかもしれません。
必死で分かろうとする姿勢が感動的
【カラー版】動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー
集英社
2015.10.10
この本のあらすじ
「最近、動物園が面白い」。そんな声が聞こえてきたのは数年ほど前。ただ姿形を来場者に見てもらう「形態展示」から、動物本来の行動や能力を見せる「行動展示」へ。動物たちの行動を理解した施設を造る裏側には、飼育員を始めとする様々な人々の絶え間ない努力があった。動物たちの行動を理解し、“心の声”に耳を傾ける。それは飼育員による大胆にして緻密な翻訳作業といえる。埼玉県こども動物自然公園「ペンギン」、日立市かみね動物園「チンパンジー」、秋吉台サファリランド「アフリカハゲコウ」、京都市動物園「キリン」。計4動物園の動物翻訳家、そして動物たちの苦闘の軌跡に追るノンフィクション! 電子版は、動物写真をカラーで収録! かわいい動物たちの姿を、カラーでお楽しみください。
おすすめコメント
タイトルは「動物翻訳家」となっていますが、当然本書に登場する飼育員たちがドリトル先生のように実際に動物たちの言葉がわかるわけではありません。だからこそ、彼らは動物たちが何を言いたいのか、何をしたいのかを知るために、動物たちの行動が発する「心の声」に必死で耳を傾けるのではないでしょうか。たくさんの失敗を経て、飼育員たちと動物たちがフッと心を通わせる瞬間が訪れるのですが、その感動といったらありません。全ての動物好きにオススメしたい一冊です。
重厚なテーマを軽やかに描く
ジャングル大帝 手塚治虫文庫全集 1巻
講談社
2009.10.9
この本のあらすじ
悠久の動物の楽園・アフリカ。しかしおろかな人類はその聖域にまで足を踏み入れていた。ある日、人間たちに白い魔王と恐れられたジャングルの王・白ライオ ンのパンジャが、ハンターの罠にかかり命をおとす。同時に捕獲された妻のエライザはイギリスの動物園に搬送中の船上で王子・レオを生んだ。母の手引きで船 から脱出したレオは故郷アフリカのジャングルに向かい旅立つ。だが、やっとの思いでたどりついたその場所はレオにとって未開の地であった。新しいジャング ルの王となったレオは平和をめざして奮闘する。手塚漫画の代表傑作!
おすすめコメント
漫画評論家の夏目房之介は本作のテーマを「異なる種族同士の葛藤と和解」と評しました。これはアニメ版の『ゲゲゲの鬼太郎』とも同じテーマで、鬼太郎が妖怪でありながら対立する人間と妖怪の間に立ち、両者を融和・和解させようとしたように、『ジャングル大帝』の主人公レオも、対立する人間と動物の間に立ち、奮闘します。他者に対する不寛容な空気が蔓延している今こそ多くの方に読んでいただきたい作品です。文章で書き出すと少し重ためのテーマですが、冒険活劇としてエンターテイメント性も十分の名作なので、未読の方には一読をオススメします!
井伏鱒二の味わい深い翻訳も見事
ドリトル先生アフリカゆき
岩波書店
2000.6.16
この本のあらすじ
「沼のほとりのパドルビー」に住む名医ドリトル先生は,オウムのポリネシアから動物語を習い,世界中の動物たちから敬愛されています.ある日アフリカのサルの国から,ひどい疫病が流行しているから救ってほしいという訴えを受けた先生は,犬のジップたちをひきつれて冒険の航海に出発します。
おすすめコメント
時代と国境を超えて多くの子供たちに愛されている『ドリトル先生』シリーズ。その記念すべき第1作目がこちらの『ドリトル先生アフリカゆき』です。食いしん坊で甘えん坊な子ブタの「ガブガブ」、計算が得意で耳がいいフクロウの「トートー」、先生のお世話を甲斐甲斐しくするアヒルの「ダブダブ」など、愛らしい動物たちとドリトル先生とのやり取りに思わず頬が緩みます。大人も子供も楽しめる人気シリーズですが、大人の方には『山椒魚』でおなじみの井伏鱒二訳の旧訳版がオススメです。ロフティング本人による挿絵もいい味出していますね。
いかがでしたか。「動物」というテーマは大人も子供も楽しめるものなので、親子で一緒に読んだりできるのも良いところですね。さて次週は「働く前に読むべし!珠玉のお仕事小説」をお送りします。どうぞお楽しみに!