原作者がやりたいと思ったことが見事に映像化された
──“ZQN(ゾキュン)”と呼ばれる感染者の特殊メイクや動きの描写も印象に残りました。
佐藤特殊メイクは当然こだわりが満載なんですけど、動きに関してもすごく研究したというか。「それじゃゾンビになっちゃうよ」っていう合い言葉もありました。いつものゾンビとZQNは違うじゃんっていうのを、みんなで大真面目に研究して。模索して何度も何度もやっているうちに「こんな感じかな」っていうのが見えてきましたね。
──たしかに、最初に登場するZQNの動きもインパクトがありました。
佐藤それから、彼ら(ZQN)にはキャラクターがあるんです。時にすごくキュートだったりして、憎めないって言うとおかしいんですけど、そういうキャラクターが大事かなと思ってキャスティングにもこだわりました。
花沢アウトレットモールの屋上で観察していると彼らのかつての日常の記憶や習慣が出てくるというシーンは、僕がやりたかったことが映像化されていると思って、すごくうれしかったですね。
──あのアウトレットモールはどこで撮影したんでしょうか?
佐藤韓国です。日本でロケハンを行って候補はいくつかあったんですけど、いろいろ諸条件を考えるとあっちのほうがいいかなと。
──邦画では珍しいド派手なカーアクションも展開されますが、あの撮影も韓国ロケですか?
佐藤一応、日本の高速道路もロケハンしたんですけど、こっちがやりたいことを提案すると無理だということだったので。いろいろ考えたんですが、国外で撮るしかないってことで韓国に行って撮りました。
──アクション面では、ラストのZQNとの戦いの特大ボリュームにも驚かされました。
佐藤クライマックスにしたいと思った原作の戦いを、舞台を変えて描きました。追いつめられていくどうしようもなさを最後に出せないか、ラストの戦いまでいろんなことが起きるけど、それらとも違う空間やドラマを作れないかと考えて、ああいうものにしました。
映画ならではの英雄らしいシーンも生まれた
──花沢先生は今回の映画をご覧になって、いちばん印象に残ったシーンはどこになりますか?
花沢英雄がロッカーの中に隠れて葛藤と妄想を繰り返すシーンは大好きですね。これこそ、漫画ではできないことを映画でやってくれているなと思って。あのシーンだけで主人公のいろんな感情がすごく出ているので、正直くやしいと思うくらいです。
──あそこは、すごく英雄っぽいシーンなんですね。
花沢英雄のダメな部分も出ているし、でも人を助けるために飛び出そうともする。あの繰り返しは「ああ、やられたな」って感じでしたね。
──英雄の葛藤と妄想が予想以上に何度も繰り返されますから、ああいう描写には勇気が必要だったのでは? 監督としては躊躇せずに描けましたか?
佐藤いろいろ練っていく中で、作品の尺の制約もあって、あのシーンを無くしてみようかって案も出たんですけど、「いや、ここはキーになるシーンだから絶対になくしちゃダメ」っていうのは初めのほうからあったんです。あのシーン、けっこう複雑なんですよ。特殊メイクもいろいろ、1日やそこらで撮れるものではなくて、時間をかけて撮っているんです。ですから、躊躇とかそういうことではなくて、むしろ力を入れて取り組みました。あそことラストで作品内のピークを作りたいと思ったんです。
──では、最後にこれから映画をご覧になるかたがたにメッセージをお願いします。
佐藤日本での上映に先行して海外の映画祭などでお客さんと一緒に見る機会があったんですが、非常にたくさんの人が興奮して手を叩いてよろこんでくれました。日本映画の中でも昨今ないピークを形成した映画になったと思いますので、ぜひ劇場で楽しんでもらえたらなと思います。
花沢ここまで原作者が納得できる作品っていうのも中々ないのではないかと思うぐらい、自信をもっておすすめできますので、ぜひ映画を見てもらって、見終わったら続きは漫画で(笑)。
──映画はいいところで終わりますからね(笑)。本日はありがとうございました!
取材・文/武富元太郎
撮影/森鷹博
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