現場では何度もディスカッションを重ねた
──今おっしゃったように現場でのディスカッションはたくさん行ったそうですね。その中でも特にポイントとなったところは?
小栗けっこう色んなことを話したんですけど、一番話し合ったのはサブローが戦地で最前線に立つところですね。ドラマではサブローは一度も戦っていないんです。でも、映画でも最後までそうなってしまうと、結局は自分の手は出さないで理想論だけを掲げてる人になってしまうじゃないですか。ドラマの最後に浅井長政を介錯する形でサブローは初めて人を斬って、改めてこの戦国という場所で生きなければいけないということを覚悟するんですけど、そのサブローがドラマの後を描く映画で戦わなかったら、お客さんもサブローの理想論に全然ついていけないですよね。なので、そこは何度も話し合いを重ねました。
──それでサブローが合戦の場に出るようになったわけですね。
小栗あとは光秀と秀吉の描き方に関しても、監督と山田孝之の3人でかなり話し合いましたね。監督もずっと台本に直しを入れてくれました。
──今回、原作とは違う映画オリジナルのエンディングが描かれます。
小栗あれだけ壮絶な経験をしたサブローがどうなるんだろうって考えて、僕とスタイリングをやってる澤田石(和寛)の中で勝手に設定も作ったりしたんですよ。あのシーンだけでそれが伝わるものでもないんですけど(笑)。
──裏設定ということですね。『信長協奏曲』はバラエティ豊かなキャストも魅力だと思います。
小栗ドラマのときはみんな湾岸スタジオ(※お台場にあるフジテレビのスタジオ)にいることが多くて、そこで空気ができ上がっていたから、ドラマから映画まで撮影期間が3~4ヶ月空いたんですけど、映画にもすーっと入っていけましたね。今回、家臣のみんなと会う時間は少なくて一緒にいたのは5日ぐらいだったんですけど、山田(孝之)君とは一緒にいる時間がすごく多くて、ほぼ毎日一緒にお酒を飲んでました。
──帰蝶とサブローのやりとりはドラマのときからファンに好評でした。帰蝶役の柴咲コウさんとはドラマのときが初共演ですよね。
小栗そうです。コウちゃんは、たぶん皆さんがイメージしている柴咲コウさんとそんなに変わらないというか。本当に凛として、サバサバとしていて。今回の作品で言うと、抱きしめ合ったりするカットでは、コウちゃんの顔を僕は見てないので、できあがった映像で初めて見たんですけど、こんなにいい顔してくれてたんだな、ありがたいなと思いました。
──サブローと帰蝶のドラマに涙する観客の方も多いと思います。
小栗プラトニックですからね。この間、映画を見た別の作品のプロデューサーから電話がかかってきたんですけど、2人のような関係は現代でやろうとしたら絶対に難しいって言われましたね。「なんでキスしないんだ」とか「もうちょっと2人の距離が近いだろう」ってことを。
──舞台が現代だと、そう言われるかもしれませんね。
小栗サブローと帰蝶は、送り出した人が帰ってこないかもしれないって、なかなか現代だとない状況の中で「行ってこい」って言える関係ですよね。そのプロデューサーとは「戦国時代ってラブストーリーを作るのになかなかいいのかもね」って話をしました。