#あの人に気になるあのこと聞いてみた

ファンたちの想いは実現する

『orange』と漫画の実写映画化の世界

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『orange』と漫画の実写映画化の世界

近年、数多く公開される漫画を原作とする映画たち。読者が胸を高まらせた物語を、実際の俳優たちが演じるそれらは、ファンにとって夢の世界の実現。そういった意味で高野苺の漫画を原作とし、未来からの手紙(過去への想い)によって現在(現実)を変えようとする映画『orange-オレンジ-』は、ある意味で漫画の実写化映画の象徴ともいえる作品だろう。
そこで今回の特集では、映画『orange-オレンジ-』について、また同作で須和弘人を演じた竜星涼と萩田朔を演じた桜田通による対談、さらに今後映画化が期待される漫画作品などの紹介を通じて、漫画と映画の関係を考えてみよう。

PROFILE

竜星涼(りゅうせいりょう)

1993年3月24日生まれ。2010年ドラマ『素直になれなくて』にレギュラー出演。その後『獣電戦隊キョウリュウジャー』キョウリュウレッド/桐生ダイゴ役、『GTO』芹澤航平役、『ごめんね青春』大木隆役で注目を浴びる。

桜田通(さくらだどおり)

1991年12月7日生まれ。ミュージカル『テニスの王子様』にて主役。その後も映画「劇場版さらば仮面ライダー電王ファイナル・カウントダウン」(2008)野上幸太郎役で主演を務め、人気を得る。その後、ドラマ・映画を中心に話題作に多数出演。

原作の世界観がそのまま現場に持ち込まれていた

──今回は漫画とその映画化の特集ということで、お二人には漫画のキャラクターをどう演じるかについてお話いただければと思います。そこで、それぞれ『orange』で演じられました須和弘人と萩田朔は、どんなキャラクターだと思いますか?

竜星涼(以下、竜星)須和はですね……いいヤツなんですよ。真っすぐで、人のことを考えてあげられる。好きな相手だからこそ、彼女の恋を応援できる男。それは、もちろん優しさからも来てるんでしょうけど、それ以上に相手に真摯に向き合う強さがあるんでしょうね。

桜田通(以下、桜田)萩田は、この6人の中でたぶん自分が一番大人だと思っている、思いこんでいる子でしょうね。だから言葉つきもキツいし、空気を読まないところもあるけど、そういった部分も含めて、周りに愛されている。みんなの中ではオチ担当みたいな役割ですけれど、萩田もそれは決してイヤではないと思います。ちょっと俺は他人とは違うんだぜ、と思ってる自意識過剰な面もあるけど、憎めないヤツといったところでしょうか。

──それでは竜星さんから見た桜田さんと萩田の似ている点、桜田さんから見た竜星さんと須和の似ている点などありましたらお教えください。

竜星似てるっていうか、初めて会った時の印象が、もう萩田そのままだったんですよ。

桜田堅物っぽかった?

竜星うん、理数系っていうか、頭がいいんだろうなって感じが。あと何か、ちょっととっつきにくそうだなーとか。

桜田まあ見た目からして、友だちが少なそうなのは認める。実際そうだし。

竜星まったく自分とは正反対のタイプに見えたから。あまり人とつるまない……それは俺も同じなんですけど、クールで自分の道を行くというか。でも実際に現場で一緒にいたら、意外にご飯につきあってくれたり、盛り上がるときは、盛り上がってくれたり。結構、周りに合わせてくれて。だから、やっぱり萩田に近いんじゃないかな。最初は表面的に似てるって感じだったけど、仲良くなっていくうちに、性格というより関係性が須和たちに接している時の萩田ってイメージになった。だから須和である俺から見たら、リアル萩田って言ってもいいくらい。原作者の高野苺先生からも「果てしなく萩田」って言われたしね。

桜田映画の『ラブライフ』につきあってくれたり、こんな優しい男は須和でしかない。

竜星変なこと言うなよー。

桜田一回、飯田で原作者の高野先生と、みんなでご飯を食べに行く機会があったんです。その時、原作には描かれていないんですが、僕たちと監督が考えた須和や萩田たちの出会いを話したんです。萩田は高校になかなか馴染めなかったけど、須和が声をかけてくれたおかげで、彼を通して少しずつクラスに打ち解けていった。それでいつも須和と一緒にいるようになった、と。そうしたら高野先生も、同じようなことを考えてくれていたみたいで。実際、現場でもシーンや段取りの関係で、僕たちは一緒にいることが多かったのですが、心を開けるという意味で、僕にとって竜星は須和にすごく近い存在です。裏表なく、まっすぐで信頼できる、言い方は悪いけど、地元の友だちみたいです。撮影の現場で、あまり会ったことのないタイプ。

竜星役者っぽくないってこと?

桜田いやいや、一線を引いていない。誰にでも分け隔てなく接するところが、本当に須和っぽいです。

──絶賛ですね。

竜星萩田と通の違いは、通のほうが色んな闇を抱えているってところかな(笑)。

桜田ついつい油断して漏れてしまって……でも、『orange』の現場は、いい現場だった。共演者と、こんな仲良くなれたことないもの。

竜星それは俺もそうだよ。

──最初のメインキャストの顔合わせで、監督の提案でトランプをしたそうですね。

桜田あれは正解だったよね。

竜星うん、もちろん個別にそれなりの役作りはしたけれど、どんな役作りよりも、この『orange』という作品は、菜穂や翔たち6人の関係性が大事だったと思う。

桜田僕ら自身の関係がよそよそしかったら、どんなに演じたところで、それはお客さんに伝わってしまうと思うんです。本当に、今回はこの作品を撮るのに最適な環境を作っていただいて。

竜星長野にずっといたというのも大きいと思うんだけど、撮影中は学生気分だった。

桜田ねえ、高校みたいだった。仕事はしっかりしてたけど。

竜星人数もちょうど良かったのかもしれないけど、俺たち6人が役柄の関係性を保てるように、監督やスタッフが最後まで見守ってくれた気がする。

桜田原作の世界観を、そのまま現場に持ち込んでくれました。だから僕たちも、作品に没頭して演技することができました。

原作のイメージを踏まえた上で、それをこえないと

──クランクイン前に竜星さんは「原作漫画の実写化は難しい」と語っておられましたが、オリジナルの作品で演じるのと、どういった違いがあるのでしょうか?

竜星漫画の実写化は難しいですよ。だってもうキャラクターのイメージがあるんですから。オリジナル作品でも役柄を掘り下げていくというのは変わらないんですけど、漫画が原作の場合、絵としてどういう風貌で、どういう雰囲気でという確固としたイメージがありますし、長く続いている作品であれば、それまで積み重ねられたキャラクターの歴史や、できあがった世界観があるので。それは、すでに形が見えているという意味では利点ですけど、実際に映像化できるのか、という意味ではハードルですよね。それも、いい作品であればあるほど、そのハードルは高くなる。

桜田うーん、漫画やアニメの実写化に関しては、これからもっと増えて欲しいと思っているんですけど、確かにその難しさもわかるんです。僕自身、漫画やアニメが好きだから、たとえば実写化された時に、キャラクターの髪の毛の色が原作と違ったりしたら、そこに敏感に反応してしまう。だから映画としては面白いんだけど、その違いの部分でがっかりしてしまった作品もあれば、原作をこえたと思える実写化映画もいっぱいある。だから僕は、今回を萩田演じる時は、彼がそこに存在していると感じられるまで、できる限り原作を読み込んだし。

竜星うん、特にこの『orange』には、キャラクターに確固としたイメージを持っているファンの方が多いと思う。でも実写化するのであれば、そういったファンの皆さんひとりひとりが描いている作品の世界観やキャラクター像を踏まえた上で、それをこえていくようなものにしないと、いい映画化とはいえないような気がする。

──原作をただ再現するだけだと、ファンがそれぞれ想い描いていたイメージに負けてしまう、と。

竜星「実写化が難しい」というのは、そういう意味ですね。イメージを踏まえた上で、違う何かが出せるか。だから撮影前はすごいプレッシャーを感じてました。

──では最後にお二人が、好きな漫画や実写化して欲しい漫画などありましたら、お願いします。

桜田竜星、手短にね。

竜星少年漫画とか好きで、いっぱい読んでますけど、やっぱり一番と言われたら『SLAM DUNK』ですかね。

──好きなキャラクターは誰ですか?

竜星きっかけは普通に桜木花道ですよ。主人公が魅力的だから、作品に引き込まれていったんですけど、最終的にいまは陵南高校のフルフル震える福ちゃん(福田吉兆)とか。あと湘北高校の角田(悟)って控え選手がいるんですけど、彼が山王戦で花道の代わりに出場して苦戦するシーンとかはすごく好きですね。

桜田現場で『SLAM DUNK』の話を始めると、いつもこうだったんですよ。本当に延々と喋り続けて(笑)。でも僕、竜星のこういうところが好きなんです。収集癖とかハマると一直線な感じが。

──なるほど(笑)。では実写化して欲しい作品も『SLAM DUNK』で、演じてみたいのは角田でよろしいですか?

竜星いや、それこそイメージの問題ですよ。俺も『SLAM DUNK』については、自分が持っているイメージが強いから、自分で演じるなんておこがましいと思っちゃうし、誰かによって実写化されると想像すると期待と恐怖が入り交じっちゃって……難しいですね、ファン心理って。

──桜田さんはいかがですか?

桜田僕も好きな漫画はいっぱいあるんですけど、ここはあえて『魁!! 男塾』をあげてみようかな、と。

──ずいぶん渋い作品ですね。

桜田あれは僕が理想とする男の生き様なんですよ。仲間のために命をかけてでも戦うし、油風呂にも入る。一番好きなキャラクターは二号生筆頭で一文字流斬岩剣を使う赤石剛次なんですけど、三号生の大豪院邪鬼もすごく好きで……すいません、何だか話が止まらない(笑)。もう一度、実写で映画化されてるんですけど、もし機会があるのなら、何かの役で出てみたい。でもこんな僕が、あの男塾の中でできる役があるかどうか、すごい悩むんです。

竜星その気持ちはわかる。俺も本当のことをいえば『SLAM DUNK』で三井(寿)を演じてみたいけど、あの場面で「バスケットがしたいです」という台詞を言えるだけの度量が自分にあるかどうか自信がない。

桜田そうなんだよね、僕も赤石みたいに剣を自分に突き刺して、そのまま後ろの敵を刺すなんて真似ができるかどうか……あまり自信がないなあ。

──ありがとうございました(笑)。

取材・文 / 倉田雅弘
撮影 / 沼田学

映画『orange-オレンジ-』の原作コミックはこちら!

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高野苺

双葉社

高校二年生の春、10年後の自分から一通の手紙が届いた。そこには「自分とは同じ後悔をしないでほしい」という、16歳の菜穂への願いが綴られていた…。長野県松本市を舞台にした、眩しいほどの青春ラブストーリー。コミックスは全5巻。

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